あれは3年前の夏のことです。

イチゴ苗の仕事をしていたら、アヒル田のところで「すみませーん。」と呼ぶ声がします。何事かと駆けつけてみたら、そこにはベトナムの若者のグループがいて、アヒルを指さして片言の日本語でこれを分けてほしいと言う。

正直、ベトナム人と出会うのは初めてだったので、信用していいのかどうか迷ったし、これからのコミュニケーションの取りにくさを思うと、ここはお断りすべきかなと思いました。

でも一方で、アヒル農法をしながらアヒル肉という食材を日本の食卓に定着させるという試みはほぼ頓挫していて、完全に行き詰っていました。もし全部買ってくれて喜んでもらえるのなら、私にとっても彼らにとってもアヒルにとっても、三方良しの関係になれるのかなとも思いました。

結局「100羽でも欲しい」(50羽ぐらいしかいないぞ)という彼らの熱意に負けて、お譲りすることにしました。いざ出荷時期になって連絡するのに苦心しましたけど、その年とその翌年、数十羽ずつ嬉しそうに持ち帰ってくれました。外敵や不慮の事故のために、十分な数量をお渡しできなかったのが申し訳なかったです。

去年からアヒル農法をやめたので、取引は終わりました。彼らはとても残念がって、今年になっても「アビルはもういないんですか?」と問い合わせをしてきてくれます。ベトナムの民にとって、アヒルはとても大切なソウルフードなんだなと、まだ見ぬベトナムの食卓に思いを馳せます。

といういきさつで、ベトナムの人々とのかかわりがちょっとだけできました。異国の地に来てご苦労されているだろうし、一生懸命日本語を覚えて接してくれているのに、こちらが上から目線で相手のことを知ろうともしないのは大変不誠実な態度だと思いました。

そこで、せめて挨拶ぐらいできるようになろうと、youtubeでベトナム語を勉強しました。

その1。「こんにちは」

シンチャウ

ベトナムでは、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」の区別はありません。すべて「シンチャウ」でOKです。軽快にフレンドリーに言いましょう。ベトナムの若者に突然「シンチャウ」とあいさつしてみたら、びっくりした顔をして「とても上手」とほめてくれました。

その2。「ごめんなさい」

シンローイ

アヒルをたくさん渡せなかったとき、アヒル農法をやめるとき、多用しました。「ローイ」のところを低く情感を込めて悲しそうに言うのがよいと思います。

その3。「ありがとう」

シンカムオン

「シン」と「オン」にイントネーションをつけて、明るく言いましょう。ありがとうの気持ちを込めて語れば、必ず伝わります。

以上。

えっ?「講座」ってそれだけかよ。

シンローイ。それだけしか覚えられなかったので。でもこの3つがしっかり言えたら、きっと大丈夫です。

気がつけば、この瀬戸内市の田舎でも、多くの外国の若者の姿を見かけるようになりました。日本の産業構造は、彼ら無しでは成り立たないのだと思います。仲良くやっていけたらと思います。

アヒルを買ってくれた若者たち、元気かな。

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