おかしらという男、博識だし洞察力もあり、目の前の事柄の嘘や裏を見抜く力に優れています。この前も、「あの店主とパートのお姉さん、不倫関係だよ。」とか、「嫁さんに逃げられたという話、あれは嘘だな。合意の上の離婚だ。」とか、思いもよらぬ観点でたくましい想像力を披露し、びっくりさせられました。しかし、改めて状況証拠を積み上げてみると、なるほどと思わざるを得ません。

ぼくは、そういうのてんでダメで、いつも人の言うことをそのまま真に受けて信じてしまいます。

あれは、某君が結婚する時のこと。
某君とは毎年、振興公社の田植えオペレーターに出動する仲間なのですが、あの年は出勤するときに彼が毎朝必ず家とは違う方角から出てきました。怪訝に思い尋ねると、「ちょっと用事があって。」とのこと。このとき、ぼくは不覚にも「ああ、何か用事があったんだ。」と思ってしまったんです。おめでたい奴です。

田植えが終わって数日後、某君が「結婚相手です。」と言って今の奥さんを連れてきました。びっくり仰天して、脚立から落ちそうになりました。あの時、すでに結婚を控えて新居を構えていたのです。気づけよ。気づかないまでも、疑えよ。

でもまあ、最近は農業資材の業者が持ってくる夢のような話は、全部嘘だと見抜けるようになりました。

♪ きみはまだ 愛や夢や希望 そういった懐かしい言葉を笑いはしないだろう
 ぼくはもう コップ1杯の水と引き換えに嘘なんて言葉を 飲み干せるようになった





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