会社勤めの頃は、三和エクステリア(株)というアルミ門扉やフェンス、カーポートなどを作るメーカーの名古屋営業所に所属していました。
ある日三重県桑名市の現場にフェンスを届けに行ったことがありました。当時乗っていた車はミッションのトヨタカローラⅡ。フェンスは600×2000のアルミフェンスが5枚入ったダンボール箱で、車のハッチバックを開けて後ろから差し込み、ダッシュボードに先端を引っかけた状態で運びました。
現場付近の道路は急な上り坂になっていて、現場横に車を駐め、サイドブレーキをしっかりと止めて車を降りました。フェンスを出そうとしてハッチバックを開け、フェンスを引っ張り出そうとしました。そしたら、フェンス先端がダッシュボードをはずれて重みで下に落ちました。
当時のカロⅡは、サイドブレーキのレバーが先端にロック解除のボタンがある仕様で、落ちてきたフェンスがこのボタンに当たりサイドブレーキが解除されてしまったからたまりません。おまけにギアがニュートラルに入っていたもんだから、車は後ろのぼくに向かってじわりじわりと後進してきました。
何故車がバックするのかを理解するのに数秒。そして車を止めるために両手で必死に車を支えました。しかし、徐々にスピードを増す鉄の塊を一人の人間の力で止められるわけがありません。もう限界。オレはどうしたらいいんだー!
あのまままっすぐバックしていたら、ぼくはぺちゃんこになっていたか、もし避けられたとしても、坂の下に人がいたとしたら猛スピードで下って来る車によって大惨事が起こっていたかもしれません。
幸運にもハンドルが自然に切れて前輪が車をカーブさせる形になり、車は道路を斜めに横切る方向に動きました。車を支えながらその車が下りていきそうな方向を見ると、大邸宅の巨大な石塀がありました。人はいない。ええい!と思い切って車を離し、自然の重力にまかせました。
車はブーンと猛ダッシュで、弧を描きながら石塀に激突。後部大破。でも他には誰も傷つけることはなかったので、動揺の中にもまず安堵感がこみ上げました。
石塀の豪邸の方に謝りに行ったら、こんなの全然かまわんよと許してくれました。石塀横の側溝に落ちた車をどうしようかと悩んでいたら、たまたま近くにいたユニック車の運転手さんが車をつり上げてくれました。お礼に5000円渡そうとしたら、コーヒー代だけもらっとくよと1000円だけ受け取ってあとは返されました。みんな優しい。
何かと折り合いの悪かった現場監督も、あまりの出来事にすっかり同情してくれて、それからは現場の工程もスムーズにいくようになったりして。
結果はオーライだったんですけど。
今でも、もしあの時車の行く先に人がいたらと思うと、背筋が寒くなってすごく動揺してしまいます。






