今日はアヒルをわはは牧場まで運ぶ日。田んぼから引き上げたアヒルをトラックに積み込み、準備を整える。

今回は「田んぼの学校」のアヒルはいなくてうちのアヒルだけなので、毎年お供してくれる三宅三太夫は不参加。一人旅なのだ。

夕方5時。いざ出陣!勇躍、トラックの運転席に乗り込む。が、唖然、助手席には
「な、なんと、どうしたのじゃ、三太夫。」
「お供しやすぜ。」
「な、なんたることか!」
夜中のトラック行、道中寂しいであろうとついてきてくれるというのだ。かたじけない。相変わらず優しいのう、三太夫。

3時間半後アヒルをわはは牧場に預け、反転毎年恒例姫路のの「玉姫ラーメン」に向かう。霧にむせぶ暗闇の狭隘な山岳を越え、29号線をひたすら南下する。敵はまだ遙か彼方。
「楽しみじゃのう、三太夫。」
「1年ぶりですからねえ。」

中国道山崎インターを過ぎ、景色はしだいに播州の国のにぎわいを感じさせるようになる。
「今年はあっさりではなく、思い切ってコッテリにしてみようと思うがどうじゃ。」
「うーん、僕はどうしようかなあ。」
心は躍ってくる。楽しみじゃ。

山陽道姫路西インターを過ぎ、姫路の繁華街の灯りが空を映すようになる。敵陣はもう近い。
「今年は替え玉ではなく、大盛りでいこうと思うぞ。」
「僕は、チャーハンもいこうかな。」
夜もふけ、極度の空腹だ。ああ、あの究極の播州ラーメンの映像で脳裏はいっぱいになる。

2号線を突っ切った。もうあと数分で敵陣じゃ。
「ゆくぞ、三太夫!用意はよいか。」
「がってん!」
もうすぐあの黄色い看板が見えてくる。あのラーメン屋らしい匂いがかげる。ああ。

「なんとなんと、どうしたことじゃ、三太夫。」
「・・・・・。」
看板に灯りが点いていない。思わず通り過ぎてしまい、再び戻ってきてみる。敵陣はもぬけの殻。敵前逃亡か。張り紙がある。「本日は都合により・・・・まことに申し訳ありません。」もちろん、ラーメンのにおいなど、かけらも無い。

「な、なんたることか。今日は運動会でもあったのか。どうしたらいいのじゃ、三太夫。」
「・・・・・・・。」
「どこか別の店でも探すしかないのか。」
「・・・・・・・。」
「でも姫路のラーメン情報、全く調べていないぞ。
「・・・・・・・。」
三太夫、ショックのあまり、口もきけない。

勝手に刀折れ矢尽きた2人は、トボトボとお店を探す。こんな時間、開いている店はあるのか。街道筋に1軒見つけ、入って食べる。播州系のラーメンだ。そこに置いてあったタウン誌を頼りにもう1軒行く。なんだこれは!まずい!スープもまずいけれど、とにかく麺が軟らかすぎて話にならない。硬麺で注文したのに標準以上に軟らかい。
拙者ももう語る気力も残っていない。三太夫も手が怒りに震え、目は涙目になっている。玉姫ラーメンのすごさを改めて思い知る。

もう1軒行こうと言い出す者も陣中には無く、傷心の気持ちのまま、備前の国へと帰路を取る。
「もう今年は玉姫を食べることは無いのかな。」
ポツリと三太夫が言った。

(文中、”三太夫”のくだりは、椎名誠さんの「すすれ!麺の甲子園」からの盗用です。椎名さん、すみません。)